大家さん、いってらっしゃい。

この家に越してきて6年8ヶ月。

大家さんは下町のよさを、ここで暮らす愉しみを伝えてくれた最初の人だ。

*

家の改装をしていると、「がんばってるね=」と

思い切りよくガラッとドアをあけてコーヒーとおやつを差し入れてくれる。

クリープとお砂糖がいっぱい入ったあったかいコーヒー

気取らないあったかさにほっこりする。

*

「口にあうかどうかわかんないけど」と煮物を持ってきてくれたことも数知れず。

繊細な大豆の煮物、豪快な豚肉の煮物、大家さんお料理上手だ。

*

4年くらい前

ホットケーキでつくったクリスマスケーキを大家さんにプレゼントしたことがある。

ヘタクソ感でいっぱいだったが

「あんたたちが越してきてくれてほんとによかったよ」とすごく喜んでくれて

こちらこそ、ここに来てほんとによかったですよ、

人ってあったかいんだなぁ、と気持ちほころびはじめ。

*

ヨガのレッスンのときにも

「あれ、いっぱいきてるね」とガラッとドアをあけて

「みんなにあげて」と差し入れをくれたり。

そんな大家さんのこと、お客さんもたぶん受け入れてくれていて。

*

そうこうしながら、ご近所の方々と少しづつ話すようになり

道ゆくおばあちゃんにも こんにちは と挨拶するようになった。

昔は、ご近所さんにふと話しかけるなんぞなかったことだ。

ここで暮らし始めて、わたしらは変わった。心がやんわりほどけていったのだ。

*

大家さんの元気な笑い声、今でも聞こえてきそうで

しわくちゃな笑顔が浮かんでくる。

*

12月23日、今日は大家さんの告別式

お花を手向けた棺のなかの大家さんは

まあるいやさしいお顔でした。

会ったらいつもしわくちゃになって笑っていたので

今日はとてもとても上品でした。

*

施設にいかれて数ヶ月、、、

89歳だものね、白髪は当然だけれど

隣でわいわい暮らしていた頃は

髪を染めていたんだなぁ。

あんなに白い髪の大家さんもはじめてで、少し驚きました。

*

お花にいっぱい包まれた百合子さん 最期のお別れ

視界から消え行く棺を見守りながら「いってらっしゃい」と心のなかでご挨拶していた。

「父ちゃんがねずみ年生まれだったから、ねずみは殺せねぇんだよ」と話してくれた

あのお父ちゃんや、一足先に逝かれてしまったやさしい息子さんと

再会している頃だと思う。

*

明るさを温もりをたくさんくれた大家さん、ありがとうございます。

さようなら、そしていってらっしゃい。

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